6月というのにもう夏のような暑さ・・・
気象庁の話では、『エルニーニョ現象の影響で今年は冷夏になる』との予測ですがホントなの?と言いたくなりますね!
ワンちゃんの熱中症にはくれぐれもご用心くださいっ!!
さて、忙しくてサボリ気味のブログ・・・いきますネ
さて、写真はアメリカン・コッカー、五才の女の子。名前は『リリ』ちゃん
ディズニー映画に登場しそうでとってもカワユ〜イ♡
子犬ちゃんの時から当院に来ていただいておりましたが、去年、飼い主様のお引っ越しとともに、吉野川の上流域(どこ?)で暮らす事に・・・
このリリちゃんが、5月3日(ゴールデンウイーク真っ只中!!)に、貧血、黄疸でぐったりして来られました
リリちゃんの引っ越し先は徳島県内ですが、かなり当院から離れているので、お近くの動物病院でバベシアの治療を行っていました。しかし、いまいち治療に反応がないとのことで、わざわざ,離れた当院へ・・・
コレは、治療後1ヶ月の現在のリリちゃんの眼ですが、当初の頃はまっ黄色でした
呼吸も速く、本当につらそうでした。体温も39.8℃、血液検査では白血球の増加、血小板の減少、ヘマトクリット値の低下(15%), 黄疸…しかし、黄疸の数値が振り切っており、今まであまり経験がないのがチョット気にかかる・・・だだのバベシアだけではないような…
溶血性の貧血には間違いはなさそうだけど、溶血性貧血といえば、徳島県は、マダニに咬まれて感染するバベシア症があまりにも有名ですね
しかし、タマネギ中毒(今は減りました)や、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)なども鑑別診断には入ってきます!! あと、腫瘍等からの腹腔内出血など
私もバベシアを真っ先に疑い、血液塗抹標本を作成!!血液をスライドグラスに薄くのばして、以前ブログに載せた染色を施すのが『血液塗抹検査』です←覚えてらっしゃいますか?ジーパン染めたヤツね!
じゃあ、血液塗抹を顕微鏡で観察した結果は・・・・?
ん? バベシアと違う気が・・・
ちなみにコチラが赤血球の表面に寄生しているバベシア原虫〈例〉です
真ん中の赤血球に2つの点があるのがそうです
下の赤血球にひとつずつある点は,バベシアかどうかは私には確信が持てません
病態により赤血球が,ボロボロになっていたり、バベシアの寄生数が少なかったり,染色に使う薬剤が古かったり←これが一番ダメダメ
どんなにキレイに作った標本でもバベシアに見えてしまう事もよくあります
つまり、血液塗抹だけでは、明らかにバベシアと判る場合と、イマイチ信用できない場合が多々あると言う事です!!
誤診しちゃうと、バベシアで治療する薬は危険なものもあるので、それで死んじゃう事も!それだけは絶対さけなければ!! ( ´ノД`)コッソリ こ、高額なクスリもネ
またまた,昔ばなしですが、関東での修行時代にはバベシアなんかありませんでした
しかし、徳島はバベシアが全国でも有名でしたから、開業当初は特に診断に自信が持てず悩み、苦しんだ覚えがあります(今も苦しい…)
コチラの写真は、球状赤血球がたくさん出現している例ですが、小型のまん丸に見えるのがその球状赤血球…
バベシア症例にも球状赤血球が認められたりしますが
今回のリリちゃんの血液塗抹には、あまりにも、球状赤血球が多すぎです
球状赤血球が多数出現すると何を意味するかというと免疫介在性溶血性貧血(IMHA)が強く疑われます
IMHAとは、簡単にいうと自分の赤血球を自分の体が敵と見なして攻撃して赤血球を破壊してしまう病気です
原因は色々ですが、バベシア症や,腫瘍などに続発して二次性のIMHAが起こる事も多いと言われております
ここで問題は、リリちゃんのIMHAがバベシアに続発しておこっているのか、そもそも、バベシアでは無いのかがとても重要です(当たり前だ…)
もう徳島でバベシアを診察してきて,15年!!
バベシアの塗抹標本は引き出しの中に山のように保存しております
私の頭の中にも『オオシマ?スーパー・バベシア・アイ?システム』なるバベシアの判断基準ができあがっております!! (ウソ)
では、リリちゃんの血液塗抹でのバベシアの出現はというと・・・・
う、う〜ん、微妙・・・・だな
(;´Д`)アウ...
赤血球の表面にはバベシア原虫の様な、ゴミの付着の様なものが少々認められるが?
これまた、いいわけですが、すでに最初の病院でバベシアの治療を開始しており、寄生数が減っているのか、それとも赤血球表面のバベシア原虫が死滅して膨化しているのかの判断が、とてもムズカしい!!!!
そこで、重要な検査が,『バベシアのPCR検査』ですっ!!これは、ワンちゃんからいただいた血液中にバベシア原虫の遺伝子が検出できるか否かを調べる検査でほぼ
確定診断ができる優れものデス!!
10年くらい前は、そんな検査してくれる会社はなかったよ〜〜〜(泣)
今は良い時代ですネー!この検査があればそんなに困る事も・・・・・
ん?あれ?
ズガ━━━━(ll゚Д゚ll)━━━━ン!!
今はゴールデンウイークだった…
で、検査会社が・・・お休みデスネ 困ったぞ
ちっともゴールデンじゃないやいっ!
そもそも、PCR検査自体が血液をクール宅急便で大阪まで送り、検査結果がでるまで一週間くらいはいつもかかっております。ましてや、ゴールデンウィーク!!
リリちゃんはとても危険な状態・・・
検査結果を悠長に待っているわけにはいきません
そこで、飼い主様には承諾のもとに、ちがうかもしれないが、バベシアの治療とIMHAの両方の治療を同時に行う事に!!
バベシア症の治療はすでに、前の病院で2回くらい、ジミナゼンの注射をうけているそうで、これ以上何回も投与すると、血管毒性により、小脳出血で死ぬかもしれないので(死なれたことはありませんが…)、当院ではあと一回だけ投与することに・・・
もうひとつのIMHAはステロイドの免疫抑制量の投与が主体となるのですが、バベシアの感染を助長しそうで、とってもイヤ〜な気分!!よけいにバベシアをこじらせそう・・・
さて、バベシアの治療の注射も普通は3回も打てば比較的に元気になって行く子が多いのですが、リリちゃんは数日してもよくならず、ステロイドが原因で反応が悪いのか?疑問が疑問を呼び、眠れぬ日々が・・・
また、IMHAそのものも緊急疾患で、予後が悪い子も多く、急死する場合や、再発を繰り返す子もいます
これ以上ジミナゼンの投与は危険と判断し、副作用の無い(しかし、高価で日本では手に入らない)貴重な薬を他の動物病院の先生にお願いして分けていただいたり…
(か○こ先生、本当に感謝です)
免疫抑制量のステロイドによるメレナ便、肝臓の悪化、腹水の出現、etc…
その後のリリちゃんの入院および闘病記は涙なくしては語れません
話せばなが〜〜くなるので割愛させていただきマス!
でも、少しずつですが、改善の兆しが…
その後・・・
PCR検査で・・・・
バベシア症では無かった事が判明!!!!
ギャガ━━━━Σ(゚д゚lll)━━━━ン!!!!
しかし、寂しがりやのリリちゃんと院長室で一緒に寝泊まりしたことを、私は忘れる事はありません!! トイレもいっしょ♡
リリちゃんも病院では私に一番なついてくれて、スタッフには目もくれず、診察中も私を捜して、付きまとうようになりました(ちょっとウレシイ…)
現在、リリちゃんは退院し、元気を取り戻しつつあり、ステロイドを少しずつ減量できております。また、貧血もかなり改善しておりますが、まだまだ油断はなりませぬ!!
先日、リリちゃんが血液の再検査に来てくれました
あれだけ、寝食を共にして病気と闘ってきた私にさぞ飛びついて(シッポをふりふり)来てくれると思いきや・・・・・
今度は、飼い主さまにベッタリ・・・
私には見向きもしてくれません・・・
Σ(゚Д゚;)アラマッ
っていうか避けられている気がっ???
私、 『リリちゃ〜ん、写真とるからコッチむいて〜』
リリちゃん、 『アナタ、ダレ?イヤッ、プイッ』っていうのが冒頭の写真です(号泣)
でも、いいや。「リリちゃん、飼い主様にベッタリできて本当によかったね!」
あと、今回はバベシア症ではありませんでしたが、バベシアはマダニが媒介するとても危険な感染症です!
一度感染すれば生涯バベシアのキャリアーになってしまいます。そして,再発の可能性も・・・
100%の予防法はありませんが、ある程度は予防できます!!詳しくはご相談くださいネ〜〜〜!!
あ、そうそう
このままでは何のオチもありませんネ・・・
オチを期待されてますか?
本当に?
今回はちょっとコワイですよ!!
心臓の弱い方はここまでで、見るのをやめておいたほうが・・・
では、
はい、もう一度リリちゃんのおめめ
そう、なにか思いだしませんか?
もう、やめた方がいいんじゃないですか??
ひっくりこけないでくださいね〜〜〜!!
ハイ、貞子さんの目〜〜!!
私は勤務医時代に一人でこのビデオをみてしまい
夜中に喉が渇いても、怖くてジュースを買いに行けなかった苦い思い出がありマス
終